利便さと不便さと

最近Amazonから届く荷物を見て、母が一言、
「それ、本？」
と聞いてきた。

読みたい本があって近所の本屋さんに
行ったらしいのだけど置いてなくって、
タイトルと作者を言って取り寄せて欲しいと言ったら、
「そんな本はないよ」と言われたらしい。
それで、もし見つかるなら買って欲しいと言う。

母はもうタイトルしか覚えていなかったけれど、
それでも簡単に検索で引っかかってきたその本。
ボタンひとつでカートに入れて
ボタンひとつで買い物出来て
とっても簡単に買えてしまった。


昔は、読みたい本を探すのって結構大変だったよなぁ。
子供の頃、ドキドキしながら本屋さんにこういう本が欲しいと言ったら、
「出版社もわからないと取り寄せ出来ないよ」
と言われた事を思い出した。

出版社！

実は、私はその時初めて
「本にも会社があるんだ！」って驚いたぐらいで、
子供にとって、これはかなり高いハードルだった。

結局、そのハードルを越えられなくて買うのを諦めてしまった。
今ではもう、何が欲しかったのかすら思い出せないけれど、
それ以降、本を買うということはなにやら難しいことで、
本屋さんでマンガコーナー以外の場所へ行くことは
ちょっぴり高尚でちょっとだけ自分が偉くなったような
そんな気分になれるとだいぶ長いこと思っていたような気がする。

その感覚は、本屋さんが大型店舗に変わるとともに薄れ、
今こうしてネット注文するようになって、完全に忘れてしまっていた。


母の欲しかった本は、明日にでも手元に届くだろう。
プロの本屋さんが探せない本を素人の私が探せてしまう。
便利で簡単だけれど、少し寂しい気がするのはどうしてかな。



・デジタル技術が身の丈を超えるとき